641:視力は遺伝?
こんにちは、新宿東口眼科医院です。
花の便りが聞かれるころとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回のテーマは「視力は遺伝?」です。
親子は様々な部分が似てくるものですので、「お父さんは目が悪いから自分も将来悪くなるのでは?」「子供に近視が遺伝してしまったらどうしよう…」そんな風に不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
子供の視力が低下する原因は様々で、大きく分けると病的なものでない屈折異常と特定の疾患によるものがあり、中には遺伝が関わっている場合もあります。
・屈折異常によるもの
屈折異常とは近視や遠視、乱視といった見たい距離にうまくピントが合わなくなる状態をいい、メガネやコンタクトレンズで矯正できる範囲であれば一般的な現象です。原因は環境要因と遺伝要因が有力ですが、関連性がはっきりと解明されているわけではありません。
- 環境要因
眼内にある水晶体というカメラでいうレンズにあたる部分は、見るものの距離によって厚さが変わることでピントを合わせています。近くを見る時は筋肉の緊張によってこの水晶体が厚くなりますが、近くを過剰に見続け筋肉の緊張状態が長く続き、元の緩んだ状態に戻りにくくなると遠くにピントが合いづらくなってしまいます。長時間読書やパソコン、ゲームをする子供が近視になりやすいと言われているのはこのためで、このように生活習慣によって目が悪くなったケースは環境要因による視力低下に分類されます。
- 遺伝要因
それ以外では、遺伝によって屈折異常が現れるという説もあります。多くは常染色体優先遺伝の形式をとると言われていますが、必ずしも屈折異常が現れるわけではありません。
・特定の疾患に起因するもの
特定の病気が遺伝することによって幼少期に視力の低下が起こるケースもあります。
- 先天白内障
一般的に白内障は老化に伴い水晶体が濁る病気ですが、中には出生直後や乳幼児期、学童期、思春期などに発症する場合もあり、視力に影響を及ぼします。この先天性白内障の多くは遺伝で発症すると言われているため、家族に同様に発症した人がいないか調べる必要があります。また、風疹ウイルスに免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかって胎児にも感染することにより白内障が生じる場合もあります。
幼児期に先天性白内障によって視力発達が阻害されると弱視になる可能性があり、これを遠視・斜視による回復見込みのある社会的弱視と比較して医学的弱視と呼びます。医学的弱視は上記のように遺伝が関わっており、一方社会的弱視と遺伝の関係性は解明されていません。
- 緑内障
視野欠損による視力への影響が認められる緑内障も遺伝が関係している場合があります。一般的な緑内障は散発的に起こることもあり、遺伝と言い切ることはできません。しかし、マルファン症候群、先天無虹彩などの先天異常と合併して起こる続発緑内障は、遺伝の形式をとると言われています。
- 網膜色素変性
視野が周辺から輪状に欠けていき、視力低下、夜盲を自覚する病気が網膜色素変性です。進行すると失明する場合もあります。この網膜色素変性も様々な遺伝形式をとります。ただし、近親者に同じ病気の人がいなくても発症することもあり、この場合は劣性遺伝で発症すると考えられています。
親御さんの目が悪いからと言って必ずしも子供も目が悪くなるわけでありません。たとえ子供の頃から目が悪くてもそれが上記のような特定の疾患と関連が無ければ過度に心配する必要はありませんが、ご不安な場合は一度眼科をご受診ください。
- 一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
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- 本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※ すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。