543:ヘルペスが出来たら皮膚科に行くか眼科に行くか
こんにちは。新宿東口眼科医院です。 毎日暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは「ヘルペスが出来たら皮膚科に行くか眼科に行くか」です。 ヘルペスというと、唇などに水ぶくれのできる感染症を思い浮かべる方が多いと思います。しかしながらヘルペスは目または目の周辺にも感染し、単純ヘルペス や帯状疱疹(帯状ヘルペス)、ヘルペス性ぶどう膜炎、角膜ヘルペスとして症状が現れます。ヘルペスについて学んでみましょう。
1. ヘルペスの感染
ヒトに関係するヘルペスウイルスには8種類ありますが、感染症の原因となるほとんどが単純ヘルペスウイルス1型といわれています。ヘルペスウイルスには、 ほとんどの人が子供の頃に感染していますが、約9割の人は症状がないままで感染に気づきません。感染後、神経節に休眠状態で存在しています。しかし、ストレス・つかれなどで免疫力が低下していたり、日光・外傷・ステロイド薬投与・歯科処置などがきっかけとなって症状が出てくる場合があります。
2. ヘルペスによる眼疾患
目に関係する眼疾患は、ヘルペス眼瞼炎・帯状疱疹(帯状ヘルペス)・ヘルペス性ぶどう膜炎・角膜ヘルペスの4つです。
3. ヘルペス疾患の症状・所見
(1)ヘルペス眼瞼炎
多くの場合、単純ヘルペスウイルスによる感染症で眼瞼に赤みを伴う水疱が多くでき、痕が残らずに治ってゆくタイプです。結膜炎・角膜炎の合併のおそれがあります。
(2)帯状疱疹
帯状ヘルペスウイルスによるものです。帯状疱疹は帯状ヘルペスウイルスの潜伏している三叉神経の領域に発症するタイプです。額から上眼瞼、鼻にかけてを司る三叉神経第1枝の領域に発症するものがほとんどで、ほとんどが片側性です。発症すると皮膚知覚は低下しますが、痒みを感じるようになります。皮膚は赤くなった後、斑点状の水疱ができ、 膿疱となったあとに自然に壊れてゆき痕を残しつつも回復してゆきます。結膜炎・角膜炎・虹彩毛様体炎・上強膜炎を合併する事もあります。
(3)角膜ヘルペス
角膜ヘルペスも単純ヘルペスウイルスによるものと帯状ヘルペスウイルスによるものがあり、更に単純ヘルペスウイルスによるものは角膜上皮を侵す上皮型ヘルペスと角膜実質を侵す実質型ヘルペスの2つの病態に分けられ、どちらも角膜知覚が低下します。上皮型は異物感・眩しさ・涙が出るなどといった症状があります。単純ヘルペスウイルスが上皮で増殖し、樹枝状の潰瘍がみられます。実質型ヘルペスでは、ヘルペスウイルスによる免疫反応が生じ、円板上角膜炎を発症します。帯状ヘルペス角膜炎では上記の帯状ヘルペスに次いで起こるタイプであり、点状表層角膜炎や角膜上皮欠損などの症状が出るほか、前房混濁や角膜後面沈着物などが症状として現れます。
(4)ヘルペス性ぶどう膜炎
ヘルペス性ぶどう膜炎は単純ヘルペスウイルスによるものと帯状ヘルペスウイルスによるものがあり、どちらもウイルスにより眼内が炎症を起こすものです。「桐沢型ぶどう膜炎」(急性網膜壊死)と呼ばれる網膜の壊死が急速に進行する病気の原因となることがあります。痒みや眩しさを伴った急激な視力低下や硝子体混濁・眼底の壊死・網膜血管炎などが見られる他、インフルエンザのような症状がみられるタイプです。
4. 治療法
皮膚全般にヘルペスがある場合は皮膚科へ、目の周辺中心にヘルペスがある場合は眼科への受診をおすすめします。ヘルペスウイルスにはウイルス増殖あるいは細胞外へのウイルス伝播の抑制の効果を持つ薬品が多く用いられます。したがって、上記4つの疾患は薬品での治療が主流であり、どの疾患にもウイルス伝播の抑制の効果を持つ軟膏や混合感染予防で抗菌剤の点眼が用いられます。その他、単純ヘルペスウイルスによる角膜ヘルペス(実質型)や眼瞼炎では ステロイド点眼薬を用い、炎症を抑えたりします。ヘルペスによる角膜炎の症状はアカントアメーバによる症状や細菌性角結膜炎と似ているため、決して自身で判断せず、お早めにご来院ください。 受診後は医師から処方された薬をしっかり点眼し指定された診察日に来院するようにしましょう。
- 一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
- 無断での記事転載はご遠慮ください。
- 本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも
当てはまりません。
※ すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。