397:ヘルペスによる眼疾患
こんにちは。新宿東口眼科医院です。
毎日暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは「ヘルペスによる眼疾患」です。
ヘルペスというと、唇などに水ぶくれのできる感染症を思い浮かべる方が多いと思います。しかしながらヘルペスは目または目の周辺にも感染し、単純ヘルペス や帯状疱疹(帯状ヘルペス)、ヘルペス性ぶどう膜炎、角膜ヘルペスとして症状が現れます。今回のテーマはこのヘルペスによる眼疾患です。
1.ヘルペスの感染
ヒトに関係するヘルペスウイルスには8種類ありますが、感染症の原因となるほとんどが単純ヘルペスウイルス1型といわれています。ヘルペスウイルスには、 ほとんどの人が子供の頃に感染していますが、約9割の人は症状がないままで感染に気づきません。感染後、目の奥にある三叉神経節に住み着き、たいていの人 が、その状態のまま一生を終えます。しかし、ストレス・つかれ、あるいは日光・外傷・ステロイド薬投与などがきっかけとなって症状が出てくる場合がありま す。
2.ヘルペス感染の症状
目に関係する症状は上記の通り、単純ヘルペス眼瞼炎・帯状疱疹(帯状ヘルペス)・ヘルペス性ぶどう膜炎・角膜ヘルペスの4つです。
(1)単純ヘルペス眼瞼炎は、単純ヘルペスウイルスの感染症で、眼瞼に赤みを伴う水疱が多くでき、痕が残らずに治ってゆくタイプです。結膜炎・角膜炎の合併のおそれがあります。
(2)帯状疱疹は帯状ヘルペスウイルスの潜伏している三叉神経の領域に発症するタイプです。額から上眼瞼、鼻にかけてを司る三叉神経第1枝の領域に発症するものがほとんどで、ほとんどが片側性です。発症すると皮膚知覚は低下しますが、痒みを感じるようになります。皮膚は赤くなった後、斑点状の水疱ができ、 膿疱となったあとに自然に壊れてゆき痕を残しつつも回復してゆきます。結膜炎・角膜炎・虹彩毛様体炎・上強膜炎を合併する事もあります。
(3)ヘルペス性ぶどう膜炎は単純ヘルペスウイルスによるものと帯状ヘルペスウイルスによるものがあり、どちらもウイルスが網膜に感染することにより生じます。後者は「桐沢型ぶどう膜炎」と呼ばれる感染症です。痒みや眩しさを伴った急激な視力低下や硝子体混濁・眼底の壊死・網膜血管炎などが見られる他、インフルエンザのような症状がみられるタイプです。
(4)角膜ヘルペスも単純ヘルペスウイルスによるものと帯状ヘルペスウイルスによるものがあり、更に単純ヘルペスウイルスによるものは角膜上皮を侵す上皮型ヘルペスと角膜実質を侵す実質型ヘルペスの2つの病態に分けられ、どちらも角膜知覚が低下します。上皮型は異物感・眩しさ・涙が出るなどといった症状のほか、樹枝状角膜炎と上皮欠損部位に浸潤が見られるのが特徴的な症状です。実質型ヘルペスでは円板状角膜炎を発症し視力が低下したり角膜実質内が血管を伴い壊死してしまう症状が見られます。帯状ヘルペス角膜炎では上記の帯状ヘルペスに次いで起こるタイプであり、点状表層角膜炎や角膜上皮欠損などの症状が出るほか、前房混濁や角膜後面沈着物などが症状として現れます。
3.治療法 ヘルペスウイルスにはウイルス増殖あるいは細胞外へのウイルス伝播の抑制の効果を持つ薬品が多く用いられます。したがって、上記4つの 症状は薬品での治療が主流であり、どの症状にもウイルス伝播の抑制の効果を持つ軟膏が用いられます。その他、単純ヘルペスウイルスによる角膜ヘルペス(実質型)や眼瞼炎では ステロイド点眼薬を用い2次感染を予防したり、散瞳や調節麻痺に用いられる薬品を点眼します。
ヘルペスによる角膜炎の症状はアカントアメーバによる症状と似ているため、決して自身で判断せず、お早めにご来院ください。
受診後は医師から処方された薬をしっかり点眼し指定された診察日に来院するようにしましょう。