304:虹彩切開術、ヤグレーザーについて
虹彩切開(LI)とは、レーザーを虹彩に照射することによって、穴をあける手術法です。虹彩に孔をあけ、房水の流れをよくします。虹彩切開は、閉塞隅角緑内障における主要な手術となっています。閉塞隅角緑内障で は、虹彩と水晶体の間がせまくなっているため、房水の流れがわるく、とどこおりがちです。その結果、房水の圧力が虹彩を前方(角膜の方)に押すような形に なり、排出口である隅角をふさいでしまいます。これが眼圧が上昇する原因です。年齢をかさねると、水晶体が大きくなってくるために、なおさら房水の流れが わるくなります。レーザー虹彩切開術によって虹彩をレーザーで穴をあけて,閉塞を予防したり,発作時には閉塞を解除して眼圧を低下させます
・ レーザー虹彩切開術
) 目的
瞳孔ブロックを解除し前後房の圧差を解消して隅角を開大する.
) 適応
瞳孔ブロックによる原発ならびに続発閉塞隅角緑内障では第一選択の治療
) 術前準備
(1) 虹彩が伸展・緊張し,穿孔が容易になるように,術前1時間前に点眼する.
(2) 術後一過性眼圧上昇の予防のため,アイオピジンを点眼する.
(3) 角膜浮腫があるときには炭酸脱水酵素阻害薬や高張浸透圧薬を投与し角膜が透明化してから施行する.
(4) 点眼麻酔下で施行する.
コンタクトレンズ
虹彩切開用のコンタクトレンズを使用する.
術式・施行部位
虹彩切開用コンタクトレンズを使用し,眼瞼に覆われる上耳側あるいは上鼻側の虹彩周辺部に照射する.
レーザー設定
(1) YAG レーザー虹彩切開術
1.装置によりプラズマ発生エネルギーが異なるため,使用機種によって定められたエネルギーを用いる.
2.虹彩表面ではなく虹彩実質に焦点を合わせる.
3.虹彩出血を予防するために,アルゴンレーザーなどで穿孔予定部位に予備照射を行うこともある.
合併症
レーザー虹彩切開術には以下の合併症があるが,なかでも水疱性角膜症は重篤であり,合併例が多く報告さ れている.水疱性角膜症の発症には,角膜内皮の状態,レーザー照射の総エネルギー量などが関連すると推測されている.術前に角膜内皮の状態を把握すること,過剰照射を避けることを心がけなければならない.
瞳孔偏位
前房出血
角膜混濁
水疱性角膜症
術後虹彩炎
限局性白内障
術後一過性眼圧上昇
虹彩後癒着
穿孔創の再閉塞
網膜誤照
※レーザー虹彩切開術の後遺症は、水泡性角膜症のリスクがあるため、YAGレーザーで最小のエネルギー照射でリスク回避を行います。
術後管理
(1) 術後の眼圧モニターを行い,一過性眼圧上昇の有無を確認する.
(2) 必要に応じて炭酸脱水酵素阻害薬や高張浸透圧薬を投与する.
(3) 術後の炎症は,自然に消退することが多いが,炎症の程度によっては副腎皮質ステロイド薬を投与する.
術後の経過について
術後は、経過観察が必要です。基本的には、手術日より、数日~1週間以内に、再度眼底検査を受けていただきます。その後は、数ヶ月~半年、もしくは、1年に1回程度の定期検査が必要となります。
*患者様の状態によって、経過観察、定期検査の周期は異なりますので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。
*必要により診察の順番が前後することがございます。
レーザー虹彩切開術にかかる費用
費用は30%負担で\30,000-\55,000となります。手術時間は準備を含めて30分~1時間程となります。通常は術後 1週間~1ヶ月後に経過を観察しております。
●上記は一般的な説明です。症状が気になる方は受診の上、医師に相談して下さい。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
●無断での記事転載はご遠慮ください。
●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。