264:コンタクトレンズの酸素透過性
寒さがひとしお身にしみるころとなりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回のテーマは「コンタクトレンズの酸素透過性」です。
コンタクトレンズの酸素透過性とは、コンタクトレンズがどのくらい眼まで酸素を通すかを示す指標です。
眼の表面の角膜にも細胞が存在し、呼吸をしています。コンタクトレンズの装用は、眼にフタをしているような状態で、酸素透過性の低いコンタクトレンズでは、角膜まで運ばれる酸素の量が少なくなるため眼に負担が大きくなります。コンタクトレンズをするのであれば、酸素透過性が高い方が眼への負担は少ないと言えます。
「酸素透過性の高いコンタクトレンズとは」
現在、ハードコンタクトレンズでは多くのレンズが酸素透過性の高いものとなっていて、当院で扱っているHCLでは、150前後のものがほとんどです。また、直径も小さくレンズの動きが大きい分 涙の循環も良いので、ソフトコンタクトレンズに比べて目の負担は少ないといえます。
ソフトコンタクトレンズでは、従来素材(ハイドロゲル)より酸素透過性の高い、シリコンハイドロゲル素材のレンズがあります。シリコンハイドロゲルは従来素材と異なり、素材そのものが酸素を通すため、ハードコンタクトレンズと同じくらい酸素の通りが良く、乾きに強いことも特徴です。
終日装用に必要な酸素透過率は24.1と言われており、種類によって異なりますが、シリコンハイドロゲルの酸素透過性は90から160程度、従来素材の酸素透過率は25~40程度です。
「酸素不足になるとどうなるか」
角膜の酸素摂取量が低い状態が続くと、自覚症状はなくても角膜が酸素不足となり、眼に以下のような障害が生じることがあります。
・角膜内皮細胞の減少…角膜の透明度を保つ役割を持つ角膜内皮細胞は、一度減ると増えることはありません。細胞が極端に減ると、将来的に白内障などの手術が出来なくなってしまう可能性もあります。
・充血…コンタクトレンズ装用により角膜が酸素不足に陥ると、角膜に酸素を供給しようと血管が拡張して充血が起こります。
・新生血管…上記の充血の状態が続くと、周辺から角膜に向かって血管が入り込んできます。これを新生血管といいます。新生血管が角膜の中心まで及ぶと、視力低下を起こすこともあります。
・感染症…酸素不足に陥った目は抵効力が落ち、感染症を起こしやすくなります。角膜潰瘍などを起こす危険性も高く、治療をしても角膜に傷跡が残る等、場所によっては視力障害や角膜移植を必要とする場合もあります。
酸素透過性の高いコンタクトレンズが、必ずしも安全ではありません。酸素透過性の良いコンタクトレンズであっても、長期間長時間装用することは角膜の負担になります。コンタクトレンズの装用時間はできる限り短くしましょう。
当院では、新しいコンタクトレンズのご紹介や、処方も行っております。コンタクトレンズの買い換え時、購入時には定期健診を受けましょう。
●上記は一般的な説明です。症状が気になる方は受診の上、医師に相談して下さい。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
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●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。