245:目が回るとなぜ気持ち悪くなるのか
こんにちは、新宿東口眼科医院です。暑い日が続きますが、熱中症にはご注意下さい。
さて、今週のテーマは「目が回るとなぜ気持ち悪くなるのか」です。
「目が回る」とは、めまいがする、目がくらむ、こうした状態を指します。遊園地にあるコーヒーカップの乗り物に乗ったあとや、自分自身でぐるぐると横方向に回った直後に数十秒間、ふらつきを感じた方は多いのではないでしょうか。目が回る=めまいは、これと似た症状が出ます。目の病気と捉えがちですが、実際は目からの影響はほとんどないことがあります。
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主に原因として考えられるのが、「耳」と「脳」です。
原因1・・・耳
耳は、音を聞く働きの他に、体のバランスを保つ機能があります。その機能に異常がきたすと、目が回る=めまいが起こります。
体のバランスをとるという役割は、内耳の前庭(ぜんてい)で三半規管(さんはんきかん)と耳石器(じせきき)がその働きを担っています。
三半規管は、前後・左右、それぞれの体の回転方向を感知し、その情報を脳に伝え、耳石器は、水平方向と垂直方向の体の傾きを感知して、その情報を脳に伝えます。
三半規管は3つの管からなる器官で、その管の中はリンパ液で満たされています。体が回転するとその動きに合わせてリンパ液が流れ、その流れる方向から、どの方向に体が回転しているかを感知し、前庭神経によってそのバランス情報が脳に伝えられます。
頭が右に回るとリンパ液も一緒に回転しますが、回転を急に止めてもリンパ液の回転はすぐに止まらないため、「右に回っている」という誤った情報を脳に伝えてしまうことから回転しているようなめまいが起こります。 このようなめまいの多くは、前庭神経や三半規管の異常によって、体が止まっているにも関わらず、回転しているかのような誤った情報が脳に伝わることで発生します。この状態が、人によっては吐き気=気持ち悪さを伴うことがあります。
耳石器は水平方向と垂直方向への体の傾きを感知するためにある2つの袋状の器官で、頭を傾けると、その重みで耳石が反応して傾き、体がどのような位置にあるのかを感知します。三半規管が、前後・左右の回転による加速を感じたときだけ働くのに対し、耳石器は、頭の傾きを感知するため常に働き、傾き具合を測定しています。
原因2・・・脳
脳の特定の場所で、出血が起こったり、血管が詰まったり、腫瘍ができたりするとめまいが起こることがあります。特に小脳や脳幹は体の平衡感覚を保つ働きをしています。その部分で血管に変化が起こるとめまいの症状が起きます。急に発症し、周囲や自分自身がぐるぐると回っているように感じ、吐き気・嘔吐などの気持ち悪さを伴うことがあります。
・脳梗塞や脳出血
脳梗塞、脳出血が起こると脳に十分な血液が運ばれなくなり、働きに異常が起こり、めまいがおこります。
・聴神経腫瘍
体のバランスを保つ情報を脳に伝達する前庭神経に腫瘍ができるとめまいが起こります。また、脳腫瘍でもめまいが起こることがあります。
・脳への血流不全
首から脳へと繋がる動脈の血液が不足すると脳へ十分な血液が運ばれず、めまいが起こります。
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このように、人は、体の回転を感知する三半規管と、体の傾きを感知する耳石器が正常に作動することによって、体のバランスをとることができています。この働きを担う器官のどこかに異常があったり、脳に異常があったりすると、体のバランスをうまくとることができなくなり、頭痛、耳鳴り、肩こり、難聴、吐き気が伴うこともあります。
目が回る=めまいの症状はこれらの原因が全てではありません。眼科よりも、まず内科や耳鼻科を受診されることをおすすめします。
●上記は一般的な説明です。症状が気になる方は受診の上、医師に相談して下さい。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
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●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※ すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。