238:帯状疱疹と眼科
こんにちは、新宿東口眼科医院です。徐々に夏らしくなってきましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。今回のテーマは「帯状疱疹と眼科」です。
●帯状疱疹とは?
帯状疱疹とは、水ぼうそうと同じ『水痘・帯状疱疹ウイルス』によって引き起こされる病気です。水ぼうそうは、ヒトの身体の持つ免疫作用によって1週間ほどで治癒します。
しかしウイルスそのものは、背骨の近くにある知覚神経節という末梢神経の神経細胞(サテライト細胞)に隠れ、何十年も潜伏し続けます。
普段は免疫作用の力によってウイルスの活動は抑えられていますが、免疫の弱ったときに隠れていたウイルスが活発にサテライト細胞の中で再度増殖し、神経節の神経に沿って皮膚や神経を攻撃しながら増え始めます。これが帯状疱疹と呼ばれるものです。
加齢により免疫力が低下し発症するケースが一番多いため、帯状疱疹は主に50代以降の方に多い疾患といわれています。
しかし加齢以外にも、精神的・肉体的なストレス、風邪などの他の疾患や手術、ステロイド剤の使用、抗がん剤の使用、膠原病などがきっかけで発症するケースも増えてきています。
●帯状疱疹の症状
帯状疱疹は神経節で増殖し、それから神経の流れに沿って身体の皮膚表面に帯状に赤い発疹と小水疱を起こします。多くの場合、体の左側か右側のどちらか片方の神経に沿ってあらわれます。体の両側にまたがることはほとんどありません。主に胸や背中などの胴体部分に特に多くみられ、ひたいなどの顔にもよくできます。また腕や足にできる場合もあり、全身どこでもできる可能性があります。多くは上半身にでき、腰から下にできるのは全体の2割以下です。多くは体の1ヵ所だけに起こり、2ヵ所以上に起こることはあまりありません。
前兆として、皮膚に症状が出る数日~1週間前から違和感やピリピリした痛みを感じる事があります。
また、皮膚の発症から1~2週間遅れて眼病変を発症する事もありますので、注意が必要です。
●眼に起こる症状
「三叉神経」という神経が侵されると、その神経の領域であるまぶたや眼に症状が出現します。三叉神経のうち、第1枝領域は額~上眼瞼、第2枝は下眼瞼~頬、第3枝は頬の下に分布しています。第1枝が好発部位であり、また第3枝領域への発症はまれです。・まぶたに起こる場合
侵されたのが三叉神経のうちの第1枝領域だと額~上眼瞼が、第2枝だと下眼瞼~頬が、
第3枝だと頬の下辺りに皮疹が出ます。これがヘルペス性眼瞼炎です。
鼻先に皮疹がある場合は鼻毛様神経が侵されている兆候ですので、注意が必要です。
抗ウイルス薬の点滴や内服、ステロイドの内服、軟膏の処方が主な治療です。
・角膜(黒目)に起こる場合
黒目(角膜)に及ぶと、帯状ヘルペス角膜炎となって角膜に炎症を起こします。眼の傷や、
混濁が主にみられます。病巣の部位により、上皮型・実質浅層型・実質型・輪部型に分けられます。
上皮型:点状表層角膜炎のほかに、偽樹枝状角膜炎がみられます。
実質浅型:上皮下に1個、または複数個の小円形の淡い上皮下混濁がみられます。
実質型:円盤状角膜炎がみられます。
輪部型:強膜炎・上強膜炎に伴って輪部に浸潤性病巣や周辺部潰瘍がみられることがあります。
治療としては、ウイルス感染症用の眼軟膏を眼に点入したり、
炎症止めのステロイドの目薬を処方したりする事が主です。
●一般の方向けですので医学用語は必ずしも厳密ではありません。
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●本文の内容は一般論の概括的記述ですので、個々人の診断治療には必ずしも当てはまりません。
※すでに治療中の方は主治医の判断を優先してください。