角膜ヘルペス
角膜ヘルペスとは
ヘルペスウイルスが角膜に感染したものを、角膜ヘルペスといいます。ヒトに関係するヘルペスウイルスには、2つの種類があります。
- 単純ヘルペス(herpes simplex)
- 単純ヘルペス性角膜炎
・単純ヘルペスウイルスは、DNAウイルスで、ウイルス粒子の中心にはDNAを含む核があり、周囲を162個のカプソメア(タンパク質の単位)が取り囲みカプシド(ウイルス核酸を包み込むタンパク)を形成している。
・カプシドは正20面体をしている
・最外部にはエンベロープ(外皮)があり、ウイルスの直径は130~180nmである。
・原則として小児が罹患する。 - 帯状ヘルペス(herper zoster)
- 眼部帯状ヘルペス
・帯状ヘルペスウイルスは水痘ウイルスと同一のものとされ、前者は向神経性、後者は向皮膚性をもったものである。
・DNAウイルスで直径は210~250nmである。
・三叉神経第一枝領域に、激しい疼痛を覚える
・約40%に角膜炎が現れる
ヘルペスウイルスの感染方法には特徴があります。ほとんどの人が子供の頃ヘルペスウイルスに感染しています。ヘルペスウイルス感染者の約1割は結膜炎を起こしますが、約9割は症状がないままで 感染に気づきません。
感染後は、目の奥にある三叉神経に住み着きます。多くの人は、症状が出ない状態のまま一生を終えます。
しかし、ストレス・疲れ・発熱などがきっかけとなり、ヘルペスウイルスが角膜の表面に出てくると、約0.05%の割合で角膜ヘルペスが発症します。
他の疾患と異なり再発を繰り返すことが特徴で、失明率が高い病気です。 他の人に伝染することはほとんどありませんが、ウイルスに対して抗体を持っていない乳幼児に対しては注意が必要です。自分の目を触った手で乳幼児に触れると、感染させる恐れがあります。
分類
角膜炎のおこる場所によって、上皮型、実質型、内皮型と分けます。 よくある上皮型と実質型について説明します。
上皮型…角膜の外層 上皮層に症状が出ます。潰瘍の形から、樹枝状角膜炎と呼ばれます。確定診断をするには、病変部をこすり取ってウイルスの有無を確認する必要がありますが、 特徴的な潰瘍の形であるため、細隙灯顕微鏡の観察で ほぼ診断できます。
実質型…角膜の中心層 実質層でウイルスに対する免疫反応が起こり、炎症が起こります。 炎症が起こった部分の角膜が 円く腫れて濁ることから、円板状角膜炎といいます。
主な自覚症状
涙が出る、まぶしい、コロコロする、見にくい、黒目のまわりが充血するなどの症状があります。
通常、片眼性です。
主な治療方法
薬による治療が中心です。処方に従って、きちんと治療を続けることが大切です。
上皮型の場合…ヘルペスウィルスの増殖を抑えるために抗ウィルス薬を用います。 また細菌感染が起きないように抗菌薬の点眼も使います。
実質型の場合…ウィルス増殖と炎症を抑えるためにステロイドと抗ウィルス剤を使います。 ステロイド薬は正しく使用しないと、角膜の病変が悪化する場合があります。角膜に濁りが残ると視力回復が難しくなります。また、視力が著しく低下した場合、角膜移植が必要となることもあります。
ヘルペスウイルスは、症状が消えても神経の奥に潜伏していて、しばしば再発しますが、その都度きちんと治療することが大切です。再発を完全に防ぐ方法はありませんが、発症の誘因と思われる体調不良などを起こさないよう、規則正しい生活を送ることが予防になります。